旅行日 : 2018年3月4日~5日
昨年9月に故障した左足首。 まだ多少痛みは残るが、だいぶ歩けるようになったのでダメ押しの温泉療法・・・と考えた。 しかしせっかく温泉に行くなら美味しい魚を食べようと、食い気第一、温泉二の次として房総の宿を予約。 ついでに以前から気になっていた「波の伊八」の作品を見て回ろうと計画した。
「波の伊八」とは「波を彫らせたら天下一」、「関東に行ったら波を彫るな」といわしめたほどの江戸時代の彫物大工で、躍動感あふれる波と龍の彫刻を得意としたそうだ。 特に行元寺の欄間彫刻「波に宝珠」は、葛飾北斎の代表作「神奈川沖浪裏」に影響を与えたといわれている。
北斎に影響を与えた欄間彫刻「波と宝珠」 行元寺(ぎょうがんじ)
行元寺参道
参道には伊八と北斎の作品の説明板が並ぶ。
山門
別名「慈雲閣」とも呼ばれ、享保20年(1735)建立だそうだ。
本堂
天正14年(1586)建立。 徳川家の庇護のもと10万石の処遇を受け、学問寺として末寺100ヶ寺を誇ったそうだ。
北斎の「神奈川沖浪裏」の原景「波と宝珠」
砕け散る波間に如意輪観音などが持つ宝珠が漂う「波と宝珠」という欄間彫刻が客殿に残る。
説明によると、伊八は馬に乗って海に乗り入れて波裏の観察を続けたそうだ。 そして躍動感と迫力ある波の彫刻は、葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」に影響を与えたといわれている。
葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」は、伊八のこの作品によく似ていることが判る。
伊八の最高傑作「牛若丸と大天狗」 飯縄寺(いづなでら)
飯縄寺は「天狗」の寺として、防火、海上安全、商売繁盛、無病息災などの御利益があり、ここには波の伊八の最高傑作と言われている「牛若丸と天狗」がある。
仁王門
最近修復された、室町期様式といわれる藁葺屋根の立派な山門。
本堂
本殿の周りにも立派な彫刻が多く施されている。 本尊の飯綱大権様は、烏天狗のような顔と羽を持つ不動明王であった、。
伊八の最高傑作「牛若丸と大天狗」
源義経が平泉に逃れる途中、天狗の勧めでこの寺に立ち寄ったという話が伝わっているとのこと。
そこで江戸後期の本堂改築の際に、住職は伊八に天狗というお題を出し、出来上がった欄間彫刻が「牛若丸と大天狗」だそうである。
【 牛若丸と天狗の伝説 】
義経がまだ牛若丸の頃、京の鞍馬山で大天狗から武術を学んだことは有名だが、大天狗から「奥州に向かうなら、わしの知り合いのいる上総の国の飯縄寺を訪ねるがよい」と言われ、伊豆から船で当地へ立ち寄ったという。
(飯縄寺パンフレットより)
なお行元寺や飯縄寺の「波の伊八」作品は撮影禁止である。 このページ内にある写真は、それぞれのお寺のパンフレットにあった写真をスキャンし、色調整を行ったものである。
伊八の若い頃の作品「波と龍」 大聖院
早春の花畑や魚が有名な千倉。 この千倉の海を見下ろす高台に大聖院があり、伊八が24歳の時に彫ったという「波と龍」が残されている。
高塚不動堂への長い階段
大聖院本堂裏手から高塚不動堂へと続く長い階段。 不動堂は元は高塚山の山頂にあったが、昭和初期の火災で一部が焼けたため現在の場所に降りてきたそうだ。
写真OKだった「波と龍」
本堂正面の中央に、伊八が24歳の時の作品といわれる「波と龍」、左右に「麒麟(きりん)」が彫られた欄間がある。
この大聖院では、ご本尊を除いて写真は良いとのことでパチリ!
見ることが出来なかった伊八の作品 石堂寺
最後に南房総最古の寺という石堂寺を訪れた。 この寺には室町時代に建てられた多宝塔を飾るために、獅子や龍、鶴などの動物の彫物16枚が残されている。
しかし残念なことに、受付の呼び鈴を押しても音沙汰なし。 どうも留守だったようで、見ることはできなかった。
「大人の休日倶楽部」と「波の伊八」
「波の伊八」は以前から知っていたが、JRの「大人の休日倶楽部」会員向けの冊子に特集が組まれた(2018年2月号)。
今回はガイドブック代わりにこの冊子を持参して見学していたが、大聖院を案内してくれた大黒さんは「今年の2月からその冊子を持って見学に来る人が急増した!」と笑っていた。
漁業組合直営店「いさばや」で魚料理第1弾を楽しむ
行元寺、飯縄寺と回った後、昼食を食べようと大原漁港内にある漁協直営店「いさばや」を訪れる。
港の水揚げ場横の食堂は、まさに漁港そのもの。 見るからに美味そうな雰囲気が漂っている。
たこ飯御膳と天ぷら2種
刺身や煮魚はホテルの夕食に出ると思うので、大原漁港で水揚げされた地だこを使った「たこ飯御膳」を注文。 刺身の3種盛りと白身魚のマリネが付いている。
妻がご飯が多すぎると白いご飯をたこ飯の上に載せてしまい、変な写真になってしまったが、実に美味いタコ飯であった。
妻が注文したのは「ショウサイフグ」の天ぷら。 他にもう一品とイカ刺しを頼もうとしたら目の前で売り切れ。 たこ飯と被るが「地だこの天ぷら」を追加注文。
これまた美味で、「夕飯が食べられるか?」と不安になるほどの大満足・大満腹の昼食であった。
「ホテル洲の崎・風の抄」で海の幸を楽しむ
宿泊するホテルは房総半島の突端、館山の洲崎灯台横に立つ「ホテル洲の崎 風の抄」である。 部屋からは洲崎灯台と東京湾の浦賀水道、房総連山を見渡せる海景色を楽しめる。
右手を見ると、館山湾の向こうに南総里見八犬伝ゆかりの地で知られる双耳峰の富山(とみさん)が望める。
一応は温泉である・・・
千葉では温泉はあまり期待できないが、一応ナトリウム・塩化物泉で神経痛や関節痛・うちみ・くじきに効能があるそうで、痛めた足を重点的に浸けてきた。 その効果は・・・
トンビの朝ごはん
朝食前にはテラスでトンビへの餌やりが行われる。 係りの人が白いタオルを振るとトンビが集まってきた。 写真では少ないが、実際には数十羽が飛び交っている。
朝ごはんは魚の切り身。 それを空に投げ上げると、トンビが急降下して掴まえていく。 もちろん宿泊客も参加できるが、まるでヒッチコックの映画「鳥」を彷彿とさせる体験であった。
海の幸で嬉しい悲鳴 ゲップ連発!
いよいよ夕飯である。 今回の目的は思う存分「海の幸の食べまくり」である。
昼食を食べすぎてあまりお腹も減っていなかったが、やはり料理を目にすると、俄然と食い気が湧いてきた!
前 菜
車海老雲丹焼き、アボガドのムース、焼き蛤、蕗の塔味噌、杏クリームチーズ
お造り
伊勢海老、平目、イサキ、カンパチ、アオリイカ、金目鯛
うんめぇ~! コリコリだぁ~!
酒が進む~ 日本酒、ビール 何でも来ぉ~い!
アワビのステーキ
何かの味噌で和えられている。 柔らかくて歯ごたえがあり美味し!
伊勢海老の鬼殻焼き
伊勢海老の刺身だけでなく鬼殻焼きも味わえた嬉しい一品。 なんか尻尾が取れてるようだが味には関係ない・・・
カレイの唐揚げ
立派なカレイが唐揚げに。 頭まで食べられるということで・・・
バリバリ! ポリポリ! ムシャムシャ・・・
夫婦二人が無言で骨まで食い尽くす。 恐ろしい光景である!
他にさんが焼きや酢の物、釜炊きの筍ご飯など盛り沢山で、超満腹・超満足の魚のオンパレードであった。
さすがに食べ疲れたのか、布団に横になった途端にパッタリと寝入ってしまった。
ダメ押しの「メバルの煮つけ」で旅を〆る
今回の「魚食いまくりの旅」では煮魚を食べていない。 そこで何か美味しい煮魚を食べて旅を〆ようと、金谷にある「the Fish」という海鮮レストランに立ち寄った。
この「the Fish」は、目の前に広がる海を眺めながら食事ができるのだが、この日はあいにくの強風と雨の荒れ模様。 この荒れる海を眺めながら、旅の総仕上げに頼んだ料理が「メバルの煮つけ」である。
更に自宅用に魚の干物を2種類ほど買って無事に帰宅。 さすがに夕飯には「もう魚は結構・・・」と思うほど、魚づくしの1泊旅行であった。
今回は何かの産業で栄えたとも思えない房総の田舎に、立派なお寺が多いことを初めて知った。 しかし飯縄寺には江戸からの参拝者が引きも切らず、隆盛を極めたという。
「波の伊八」の名を知る人は少ないようだが、「大人の休日倶楽部」のお蔭で全国に名が知れ渡ったことと思う。 今後は江戸時代と同じように、伊八の見学者が後を絶たずに訪れるようになるかもしれない。