上野の東京国立博物館で「仁和寺と御室派のみほとけ」という特別展が開催されている。 この特別展に大阪・葛井寺(ふじい寺)の「千手観音菩薩坐像」が展示れてている。
この「千手観音菩薩坐像」は、数ある千手観音の中で最強と思われ(個人的感想)、以前から一度見てみたかったのでお目にかかりに行ってきた。
最強の千手観音
まるで孔雀が羽を広げたような手、手、手・・・ また見方によっては、びっしりと爪楊枝が刺さっているようにも見える。
この仏像は8世紀の奈良時代に作られた日本最古の千手観音だそうで、作者は不明とのこと。
一般的な千手観音は、正面の2本と周囲に40本の手を持つ。 しかしこの仏像は正面2本の手と周りの大きな手が40本、更に小さな手が1001本もあるそうで、手のひらには目が描かれている。
千手観音が持つ道具
千手観音は手に様々な道具を持ち、中には髑髏(ドクロ)まである。
これらの道具は「持物(じもつ)」という仏像が手に持つ道具で、それぞれに意味があるそうだ。 ちなみにドクロは「一切の鬼神を意のままに操る」道具とのこと。
千手観音は様々な仏像が持つ持物のほとんどを持っているそうである。 これは手がたくさんあるから出来ることであり、それだけ人々を救済する守備範囲が広いと言えるのかもしれない。
ギリシャ神話にも似たような・・・
千手観音に似た女神がギリシャ神話にも登場する。 海の神ポセイドンの愛人である「メデューサ」である。
メデューサの頭には無数の蛇が「怒髪天を衝く」ごとく炸裂している。 このメデューサを見たものは、石に変えられてしまうという恐ろしい女神である。
背中の手と頭の蛇の違いはあるが、何となく姿は似ている気がする。 しかし かたや人を救い、もう一方は呪いをかけると、性格は180度異なっている。
千手観音の往復ビンタ
「千手観音の往復ビンタ」という動画がネット上にある。 物理的に可能か否かは別として、この「千手観音菩薩坐像」の大小合わせて1041本の手で往復ビンタを食らったどうなるのだろう???
ビタッ! ビタッ! ビタビタビタビタビタビタビタビタ------ッ!!
怒涛のビンタ! 永遠と思われる往復ビンタの嵐である。 想像しただけでも恐ろしや。 御勘弁願いたい。
こんなもの食らったら、きっと「こまわり君」のような頬に・・・
一方 この1,000本の手で全身をマッサージされたら、まさに天国である。 しかし くすぐられたら瞬殺・悶絶死である。 また理容師とか美容師になれば一気に髪を仕上げ、麻雀屋であれば瞬く間に牌を積み上げてくれる。
1000本の手を活用できる職業は様々あると思うが、1000本すべてを同時に働かせることは困難で、半数以上は遊んでしまうことだろう。 それを考えると多くの人々に救済の手を差し伸べる仕事が、やはり千手観音に最もふさわしいものと思える。
未公開の仁和寺修行道場 「観音堂」を再現
仁和寺の「観音堂」は僧侶の修行道場であり、一般の客は立ち入れないお堂だそうだ。 しかし現在改修工事中なので、実際に安置されている33体の仏像を東博に運び込み、写真撮影用コーナーとして観音堂内部を再現している。
再現された「観音堂」の仏像群
中央の千手観音菩薩立像をはじめ、二十八部衆立像や風神・雷神立像など、33体の仏像を祀った観音堂内部が再現されている。
回廊壁画も再現
高精細スキャナを使って堂内壁画を撮影した画像を使って、仏像群の裏側を回る回廊も再現されている。
拝むことが困難な秘仏も公開
大阪・葛井寺の「千手観音菩薩坐像」は毎月18日だけしか開帳されないので、なかなか見に行くのは困難である。 更に今回の特別展では、他に全国の御室派寺院から滅多にお目にかかれない秘仏も公開されている。
たとえば福井県・中山寺の「馬頭観音菩薩坐像」は、33年に一度しか開扉されない秘仏らしい。 また兵庫県・神呪寺からは、毎年5月18日にだけ開扉されるという、美しい「如意輪観音菩薩坐像」など、思わず見入ってしまう仏像が数多く出展されている。
更に弘法大師・空海自筆の書や、唐から持ち帰ったという書など、国宝が盛りだくさんの見ごたえある特別展であった。