リスボンのフィゲイラ広場から、路面電車で約30分ほど揺られるとベレンへ到着する。 15世紀初めのヨーロッパ列強が争う時代に、ポルトガルは海洋進出を果たし、輝かしい大航海時代を築き上げた。 ベレンには大航海時代を象徴するモニュメントが残り、世界遺産にも登録されている。
ベレンの塔
ジェロニモス修道院はチケット購入に並ぶと聞いたので、先にベレンの塔を訪れ、ジェロニモス修道院との共通券を購入して入場した。
この塔はテージョ川を行き交う船の監視と河口を守る要塞として、1519年に完成した見張りの塔である。 大航海時代には、長い航海から帰り着いた船乗りたちを迎えるシンボル的存在だった。 水に浮かぶ優美な塔で、司馬遼太郎は「テージョ川の公女」と称したそうである。
外見は優美だが、要塞として建てられたので内部には大砲が並ぶ。
屋上から眺めると、ジャカランタの並木を持つ街並みが見えた。
発見のモニュメント
大航海時代を導いたエンリケ航海王子の没後500年を記念し、1960年に建てられた帆船をモチーフにした塔。
大航海時代を切り開いた32人の石像が立つ。 先頭に立つのがエンリケ航海王子で、3人目がバスコ・ダ・ガマだそうだ。
モザイクの世界地図
発見のモニュメント前の広場にはモザイクで世界地図が描かれ、ポルトガルが発見した国とその年号が書かれている。 日本は1541年となっており、1543年の種子島上陸に先立ち、豊後にポルトガル船が漂着した年号が示されている。
ジェロニモス修道院
バスコ・ダ・ガマによるインド航路発見を記念し、エンリケ航海王子が建てた礼拝堂を基に、マヌエル1世により造られた修道院である。 約300年の年月と、東方交易や植民地支配で得た莫大な富を投じて建設され、まさにポルトガルの黄金期を象徴する建物である。 ベレンの塔とともに世界遺産に登録されている。
修道院中庭と回廊
修道院の中庭を取り囲む回廊は、多くの彫り物が施されて美しい。
サンタマリア教会
修道院内にあるサンタ・マリア教会は、ヤシの木をモチーフとした支柱が聳え、荘厳な雰囲気を醸し出している。
教会奥の礼拝堂には、マヌエル1世と王妃マリアなどの王家一族の棺が安置されている。
修道士たちの食堂
広々とした大きな部屋は、修道士たちが食事などをする共同部屋だったそうだ。 壁を飾るアズレージョが美しい。
バスコ・ダ・ガマの棺
アフリカの喜望峰を回り、インドへの航路を開いたバスコ・ダ・ガマの名は、歴史の教科書でおなじみである。 なんとその柩が置かれていた。 またカモンイス広場に像が立っていた詩人のカモンイスの棺もあったが、こちらは知らなかったので何の感慨もわかなかった。
サンタ・マリア教会正門
見事な彫刻が施され、1584年に天正遣欧少年使節団が訪れたそうだが、さぞかし目を見張ったことだろう。
パスティス・デ・ベレンへ
ポルトガルではパスティス・デ・ナタと呼ばれるエッグタルトは、ポルトガルの代表的なお菓子である。 なかでも一番美味しいと称賛される「パスティス・デ・ベレン」という店に、行列覚悟で食べに行く。
最初は列に並んだが、列の先頭を見に行くと「持ち帰り」で並んでいるようである。 そこで列を外れて店内に入り、空いている席に座って注文した。
思ったより甘さ控えめで、中は滑らかなクリームがたっぷりと詰まり、外側はパリパリッとしたパイ生地である。 焼き立てでほんのり温かい、絶品の一品であった。